今年は統計開始以来最も早い木枯らし1号が近畿に吹いたそうですね。
匂いと記憶はとても結びつきが強いというのはよく知られている話です。
私事で恐縮ですが、金木犀の香りをかぐと私は従兄弟姉妹がそろって過ごした幼い日を思い出します。
特にその思い出は祖父の葬儀の日なのです。いとこたちはみな年の頃が近く、上は小学校高学年か、私は下のほうから数えて早く7つくらいでした。お悔みの席であると言うのに、子どもたちは賑やかで、大人しくはしておらず、衝立の裏へ回ってみたり、みんなで転がるように庭先に出てかくれんぼをしたり、ひだまりに舞う蝶を追ったり。時たま大人たちに、シーッ静かに!と言われ、「弔いの期間に生き物をとってはいけない」と渋顔でたしなめられたりもしたのを覚えています。
クマバチとのエピソードです。クマバチは実はおとなしいハナバチの仲間で、決してこわい悪役などにはなりえないのだとか。
「私が幼稚園の頃、園庭に大きな藤棚があり、藤の花にクマバチがたくさん飛んできました。私はあの黄色い背中のビロードのような毛に触れてみたくて、何度も何度もクマバチにとびついていました。それを園長先生はだまって見守ってくださいました。
私がようやく背中に触れたとき「ゴロチャン、よくやったね」とほめてくださいました(私の本名は五郎です)。勇気のある偉い先生でした。…」
幼い時から熊田さんが自然に虫の世界に踏み込めたのは、この先生のおかげであったそうです。ちょっと驚くようなあたたかいお話ですね。
庭先の満開の金木犀の花を手に手にとっては、ポケットやらハンカチやら、なにかの空き容器やらに入れて運んだ日。むせ返る程の香りの中ただ純粋に遊んだ記憶。今思えばあれほど従兄弟姉妹が全員そろって、上は下をかばい、下は上を慕い無邪気に遊んだひと時は、以来もうなかったのではないかという気がします。
田舎の木々の間から覗いた青空、手指についた紋白蝶の羽の鱗粉が、今思うと祖父の最後の贈り物だったかもしれません。
今日は、金木犀の花に寄せて。
皆様にはどんな香りからどんな記憶がわき起こるのでしょうか。
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