カナリアるーむ こころの相談室

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一条の白い道

 今日は深呼吸と心の話です。

当相談室では、お話をお聴きする中で、呼吸法を取り入れ、音楽なども流しつつリラックスした雰囲気の中で心を見つめて頂いています。

日常は思った以上に慌ただしく動いています。だからこそ、相談室ではあえてゆっくりと呼吸に着目していただきます。息を下腹から行い、今自分は何を感じているか、今ここでの状態に注目し、手足、耳からの音、肌に触れる部分などのごく基本的な感覚に気持ちを寄せてゆきます。今何が聞こえるか? 手の温度はどうか?足に触れている部分はどんな感じがするか? など…とても基本的なところから感じていきます。たったこれだけのことですが、これがはじまりとなって、様々な心配事、不安をはじめ、いろいろな感情を抱えていること、あるいはただただ感じることでふと流し去られる雑念もあること、などなど…気づかれることがあるかと思います。

先々月、三鈷の松の禅林寺の話題をあげましたが、呼吸やメディテーションに関連して少々その続きをしたいと思います。

その禅林寺に「二河白道」をかたどった一室が設けられていました。いわゆる仏画として有名な「二河白道の図」の再現なのですが、奥に黄金の仏壇がまつられ、白く細長い布が中央に敷かれており、両脇は火と水の荒々しい絵画で飾られています。

二河白道図にはさまざまなものがありますが、たとえばこちらなどいかがでしょうか。

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重要文化財 絹本著色二河白道図 https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/127087

この図に個人的には一番親しみを感じるのですが、仏様の教えの世界では、はるか前方に極楽浄土が、こちら手前は我々の住む俗世とされます。中央に細長くのびる白い道、これが我々の渡っていくべき導きの道です。見送るお釈迦様の姿はあれど、なんともこころもとない僅かな幅員で、左右には火の河、水の河。怒り・憎しみ・妬みと激しい感情は燃えさかり、はたまた他方には色とりどりの絹織物か財宝か底知れず沸く物の欲、後方からは「危ない恐ろしい、無理無理よせよせ」と大声で呼びもどそうとする者達や猛獣、まさに貪・瞋・痴、“THE 三毒” (?) を一枚におさめた図ですね。

感情の荒波に呑まれそうな下半分図ですが、私たちの日常などまさにこの通りかもしれません。かく言う私も例にもれず。

気をつけて見て頂きたいのは、この中央にのびる一条の白い道です。

呼吸法に話をもどしますが、日常でしんどい思いを抱える私たちにも、(仏への信心あるなしではなく)心の有り様として、誰しも一条の白道を有しているのではないかと考えています。この迷い、欲、不安、とくに苦しいのは怒りなどの感情ですが、翻弄されている渦中だからこそ、息を整えて、本当の自分の気持ちに丁寧に向き合ってゆきます。たとえ濁流の内であっても我々は、たとえば呼吸を整えるひと時に、片鱗でもつかむことは可能です。本当は自分はどうしたかったのか、どのように在りたかったのか。自分に対する嘘のない、本心に向き合うことができるはずであり、その力をどのような方でもお持ちであると信じています。この白い一条は、自分の正直な心に通ずる道と考えてみてください。

よく呼吸法のときに「あなたのもっとも安心できる景色、散歩道を想像してみてください。」とお願いすることがあります。ここでイメージをしていただく映像は一人一人を守るものですが、畢竟、二河白道図においての一条の道にもつながると思うことが多いのです。もちろん決して広く太く闊歩できるような大通りではありません。迎えの車も来ず、火の粉水しぶきを防ぐ壁もありません。左右の火と水の勢いから身を守りながら、一心にご自分の気持ちに向き合って見ましょう。深い呼吸にはその手助けをする力があります。

 

朝起きてすぐも結構ですし、仕事や家事・学業の休憩時間、ほんの数分でもかまいません。心を静め、感覚に耳を澄ませ、体と心の声を聴いてみてください。カウンセリングルームもそのお手伝いをいたします。

 

カナリアるーむでは、コロナ期を乗り越えるため初回無料相談を継続して行っています。一度きりでももちろん結構です。少しでもカウンセリングを身近に、日々の力に役立てて頂きたいと願っています。

ご予約は前日までに、メールまたはLINEにて承ります。どうぞお気軽にご利用ください。